授業終了後の生徒さんとの雑談の中で「・・・で大変、でもがんばる」とか、「・・のに力がまだ届かない、でもがんばる」とか、あるいは授業終了後に書いてもらう感想ノートに「・・・で不安、でもがんばる」など、このところ小6・中3の受験生の間ではほぼ定着してきた言葉が「でも、がんばる」です。

彼らあるいは彼女らは、受験勉強をし始めた頃は少し宿題が多いとか、部活などでなかなか勉強の時間がとれないなど、負担の多さや思うようにはかどらない勉強に、愚痴を言うことがありました。

そこでこの1年間、主に受験生を中心に、心の持ち方をいろいろお話しさせて頂きました。受験生の皆さんはこの1年の日々の勉強や合宿、講習などを通じて、愚痴や不平不満からは決して何も生まれないことを分かってくれたのではないでしょうか。どんなに困難で不可能とさえ思える状況でも、必ず突破口があると信じること、そしてそれを言葉にして言うことで現実に突破口を作り出してきたこと。少なくともできると思って考え始めれば、それなりの手がかりを探す姿勢ができます(できないと思っていたらいつまでたっても探そうという気にはなりません)。探し始めるとベストとは言わなくても悪い状況からは脱出できる、そういった事をいろいろな場面で経験してきてくれたと思います。何か事を成し遂げようとするとき、この姿勢の持ち方はとても大きく結果を左右します。

ここ数年、この発想で飛躍的に成績を伸ばしたり、勉強を始めたばかりの時には難しいと思われた学校の合格を勝ち取った生徒さんが幾人か見られます。すべては気の持ちよう。困難や不可能は自分の外にあるのではなく、自分の気持ちの中にあるのです。受験を通してこのことを理解できたなら、もうこの受験は半分成功したも同然です。この気持ちを持って何とかしようと努力する姿勢はその後のあらゆる困難をも乗り越える大きな力になるからです。

これは受験生に限ったことではありません。お父さん、お母さん達もそれぞれが困難な状況に陥る事はよくあることです。仕事であったり、家庭であったり、ほんとに困ってしまう状況は誰にでもあるものです。そんな時「でも、がんばる」と言ってみたらどうでしょうか。そうです。子ども達が学んでいることは、決して子ども達だけが学ぶべき事ではなく、広く私たち大人が何歳になっても常に心しなければならないことを学んでいるのです。大人になればなるほど複雑に絡み合った糸が解決を困難にしています。にもかかわらず「でも、がんばる」なのです。その大人の姿勢が子どもの「でもがんばる」気持ちを作り上げる大きな原動力になっていくのだと思います。

「がんばらない」を標語に掲げる病院もあります。患者さんの気持ちの負担を少しでも軽くし、心を解放するための方策です。しかしこれから人生の大きな航海に出て行く若者達はまずはがんばること、乗り越えること、切り拓くことを学ばなければなりません。ここを学ばずして出航するのはあまりにも危険です。受験という、初めて遭遇する不安と孤独の中で、がんばる気持ちをしつかりと身につけてくれたらとても素晴らしい収穫だと思います。

まさに受験直前、受験生にとってはもっとも不安になるこの時期、塾の中では今日も「でも、がんばる」が聞こえてきます。もちろん、私も「でも、がんばる」です。