「青藍学院創立30周年記念会にあたって」(2014年10月10日発行)

今年4月で創立30年目に入りました。最初の中学卒塾生はすでに45歳になっているはず。青藍学院は昭和60年(1985年)4月に井の頭通り、南郵便局の斜向かいに誕生しました。その当時は日産自動車の販売店が1階で2階と3階が空いていました。初め3階の3教室から始まった塾は瞬く間に生徒数が増え2ヶ月後の6月には2階も借りて全部で7教室になりました。そんな出発から30年。第二校舎を作ってみたり、下北沢校を作ったり、いろいろな変遷を経て平成7年に今の駅前に移りました。それからでもすでに20年が経ちました。様々な生徒さん、ご父母との出会いがありました。子供たちと関わる中で様々な学びを頂きました。今回はその学びから2・3思いつくままに挙げてみたいと思います。

先ず初めに生きていく中で心の底からの喜びや充実感・達成感を得るためには、自分のためだけではなく、誰かに喜んで頂く事が大切であるということ。人に喜んで頂く、あるいは人と共に喜ぶことが喜びの深さを増していくものであること。つまり自分の人生を充実したものにするには、その視線の先に常に誰かの笑顔が見えるような生き方がしたいということです。私たちが活き活き生きるエネルギーを最も戴けるのは、本来の人間の在り方の沿った生き方をする時ではないでしょうか。私たちは自分の両親をはじめ様々な人々に支えられて生きています。人以外の様々な生き物、自然に支えられています。全てがお陰様です。そしてそのお蔭様に対してお返しできるのは感謝の思いです。まさにそれが自分の行動、生き方の中に沁み込んでいくとき人の喜びが自分の喜びとなると思います。数年前にこの欄でも書きましたが「夢」と「志」の違いは自分の想いの視線の先に“自分の利益”だけがあるのか“ひとの笑顔”があるのかによって違ってくるように思います。

2つ目はすぐ目の前の結果を求めないこと。大きな目で見れば目の前の結果は単なる次の目標のステップに過ぎないこと。結果を求めるより今を充実して生きること。今を楽しく充実して生きていけばその結果は自然に付いてくるもの。敢えて目の前の結果を求めようとするとどうしても人を巻き込み対立が生まれ、葛藤し、悩むことになる。多くの場合子育てでお母さん方はついついこのパターンにはまってしまう。このことは本欄でも様々な形で書かせて頂きました。塾でも生徒さんの成績の結果を早急に出そうとすると無理がでてきます。勉強をやらせ、やらせられる関係にしかならないからです。でも生徒さんのものの考え方、姿勢、学ぶ意欲を育てることによって最終的には子供は自分で勉強に取り組むこと。そして結果に繋がること。万が一その成果が入試の結果として出なくても、姿勢ができあがれば、その先の学校に入ってからでも成績は伸びます。それはこれまで卒塾したたくさんの生徒さん達が示してくれています。人生は一つの目標を掲げてその到達点を求めて生きる生き方もあれば、その到達点のあるなしにかかわらず、その過程をどのように過ごすか、毎日のあり方をどうするかという生き方もあります。しかし到達点にたどり着いたから人生はそれで終わりではありません。きっと次の目標なり到達点なりが出てきます。結局はその到達点を求めるためにどんな過ごし方、生き方をするかが一番大切なことのように思います。そしてそこには失敗はない。全てが経験となって自分の血となり肉となっていくわけですから。全ての経験が自分の人生を作っているということだと思います。

3つ目はいつどんな時でも心に喜神を持つこと。安岡正篤という東洋哲学の大家は、感謝すること、陰徳を積むことと同時にこの心に喜神を持つことの3つを健康の3原則としています。例えどんな辛いことがあっても心の奥に喜びを持つ。その出来事は自分を反省し鍛錬する契機になる、有り難いことととらえる。これは突き詰めるとどんな時でも笑顔を失わないということ。とても難しいことでもあります。究極的には人生を肯定する心が無ければなりません。お陰様の中で生きる人生は人の笑顔によって支えられ、笑顔によってその感謝の思いを返してゆくのみです。今年青藍学院の講演会でお招きした腰塚勇人さんはスキーで頸椎を痛めて首から下が全く動かなくなるという不幸に見舞われました。30代の体育教師がもしかすると一生寝たきりか良くても車いすでの生活を宣告されたときの苦悩は計りしれません。そんな苦悩の中から彼は自分には何も出来ないけれど、自分を世話してくれる人々に笑顔だけは返せる。そんな思いで笑顔を絶やさないようになったとおっしゃっています。笑顔は人生の先に希望を見いだします。結果として彼は立ち上がることも歩くことも出来て、今では全国を講演して命の大切さを訴え、沢山の人々に感動と勇気を与えています。

このほかまだまだ数えきれないたくさんの事を学ばせて頂きました。これからはこの30年の学びを活かして、皆さんお一人おひとりが活き活きと生きていけるよう、お役に立てればと願っております。塾とともにさらなる成長を目指してこれからも自分の使命を果たすべく頑張ります。この30年の皆様からの温かいご支援に心から感謝申し上げます。(代表 林 政夫)