前号に続いてこの問題について教室での生徒と先生との会話として取り上げてみます。

先生「今日はみんなと『なぜ勉強するのか』ということについて考えてみたいと思います。
これについて君たちはどう思っているんだろうか。だれか考えてみたことのある人は?」

生徒A「お金持ちになるためです。」
先生「なるほどね。お金持ちになるために勉強するのもひとつだね。ところでお金持ちになってそのお金をどう使う?」
生徒A「どうって、欲しいものとか、買いたいものとかたくさんあるし」
先生「なるほど、じゃあ買いたいものが全部買えたらそのあとはどうするのかな?洋服も車も買って、プール付きの家まで買って・・・・。でも誰かがもっといい車やもっと大きな家を持っていたり、もっと快適な土地に住んでいたりしたらきっと君もまたそれらを欲しくなるんじゃないのかな・・・。」
生徒A「う~ん」
先生「何時もいつも、『もっともっと』となるんじゃない?」

生徒B「先生、僕はお金よりも将来会社の社長になりたいです。そして沢山の人を使って大きな仕事をしたい。そのために勉強するんだと思います。」
先生「すごい、それはいいね。じゃあ、社長になって大きな仕事をするには何が一番大切だと思う?」
生徒B「ええと、沢山の知識とか、それから先を見通す力とか。」
先生「大きな会社になればなるほど沢山の人が関わってくる。組織としても様々な人たちが集まって時にはそれぞれの派閥ができたり、君一人の思うようにはならなかったりすることが沢山出てくるよね。そんな時君に必要なのは単に専門的な知識とか先を見る目とかではなく、君の周りの人とどうやって上手く関わっていくかと言う事じゃないのかな?人間的な魅力が有ればあるほど沢山の人が君に賛同してくれるだろうし、組織は一枚岩になって目的に向かって進むことができると思うよ。大きな仕事を成し遂げるというのは様々な人々の協力無しでは決してできないものだからね。」

生徒C「先生!私は自分が幸せになるために勉強するんだと思います」
先生「う~ん、そうだね。それは良い考えだね。自分が幸せになるために自分のために勉強する。うん、きっとそうなんだね。ところで自分が幸せになるってどういうことなんだろう?」
生徒C「・・・」
先生「それは人によっていろいろ違いがあるかも知れないけれど、先生はね、他の人から『ありがとう』って、笑顔を頂いたときが最高の幸せなんだよ。お役に立てて良かったなって心の底からそう思うんだよ」
生徒「ふ~ん」
先生「他の人から沢山の笑顔を頂くこと。それが自分の幸せになる、つまり自分が活き活きと生着られるって事じゃないかな。」
生徒C「じゃあ先生、なんのために勉強するかって、結局他の人のために勉強するって事なの」
先生「結局はそういうことじゃないかな。このことは実はさっきのA君やB君の事とも関係するんだよね。A君はさっきお金持ちになるためだと言ったけど、お金持ちになること自体決して悪くはない。むしろ素晴らしいことでもあるわけだけど、問題はどういう風にしてお金持ちになるか、そしてそのお金をどう使うかなんだね。みんなに喜ばれる中から得られたお金はとても価値があると思う。またその一部でも誰かのためになる様に使うのであればみんなから歓迎される。自分のためだけに使うとしたら誰からも喜ばれないままで終わってしまうよね。同じお金持ちでも、他の人に喜ばれるかどうかで大きく違ってくるよね。」

生徒A「あ、そっか・・・。」
先生「またさっきB君は大きな仕事と言ったね。仕事の大きさってどういうことかなあ。仕事の規模の大小ではなくて、より大勢の他の人々のためと言う意味なら、まさにB君の目的が他の人々に理解され共感を呼ぶと思うよ。沢山の人々の協力を得られることに繋がってもくるんだよ。大きな仕事と言ってもそれがただ自分のためだけならば決して誰も協力してはくれないと思うよ」
生徒B「はい」

先生「それぞれが自分の好きなことで自分の力を発揮して少しでも他の人々に喜んでもらえる、これが大事な事じゃないだろうか。だれかの笑顔を頂くために自分のレベルをアップする。学びはまさにそんな楽しさの中にあるものじゃないかな。」
生徒「なるほど」