「なぜ勉強するのか」 何度目かのテーマになりました。今回はこれを「どう生きるのか」と「どう勉強するのか」という2つに分けて今号と次号とで考えてみたいと思います。
まず「どう生きたらいいのか」。 これは、勿論皆さんお一人おひとり、それぞれのお考えをお持ちのことと存じます。こんなテーマを大上段に構えるのは不遜なことではありますが、ここでは日頃、私が考えていることを少しお話しさせて頂きたいと思います。
私たちが一番気持ちよく生きている状態と言うのはどういう状態でしょうか?(もちろん身体が健康であることは大切なことですが、ここでは主に心のあり方について考えてみたいと思います。)私は一番気持ちよく生きている状態というのは、毎日が楽しいと思える状態ではないかと思います。心の底から喜びにあふれワクワクし、充実感にあふれ、達成感を得られる状態。これは心も身体もまさに「活き活き」している状態です。
「楽しさ」「充実感」「達成感」。現実にこれらを毎日感じる事は難しい。ただ私の場合、有難い事にこれら三つを同時に感じる瞬間があります。それは「人に喜んでもらった時」です。
人から喜ばれる時。それは、笑顔を見る事。この笑顔に出会う時、私は喜びと充実感、そして自分が他の人の為に役に立つことが出来たという達成感を感じます。そしてその時、実は最も大きなご褒美を頂いているように感じるのです。それは、『生きるエネルギー』です。
人に喜んでいただけたという事はいつまでも残ります。何年たってもその事を思い出して嬉しくなる事があります。それは、私の中にもっと頑張ろうという気持ち、つまり「生きるエネルギー」を生じさせます。人に喜んでいただけることの大きな意味は、まさに自分の人生の原動力をいただくことではないでしょうか?私はこの原動力が自分の明日の「活き活き」につながっていくのだと思います。活き活き生きていくためには人から喜ばれる生き方、人のお役に立つ生き方が大切になってくるのではないかと。
どうして、こんなにエネルギーを頂けるのだろうと自問自答することがあります。そんな時ふと、「お蔭様」という言葉が浮かびます。私たちが人生を「活き活きと生き」ていけるのは自分をこの世に生んでくれた両親、運命共同体として一緒に生きてきた家族、そしてその家族を支える地域、社会、目に見えないたくさんの人々・・・。もっと広く言えばその人間を支える自然、地球、昼と夜を作り光とエネルギーを与える太陽、そして宇宙。これらの様々な存在、力によって私たちが生かされ支えられている、それが「お蔭様」という事ではないでしょうか。ただこれらの存在はあまりにも私たちにとって当たり前のこととされ、ついついこれらの存在によって生かされているという事実を見過ごしてしまうことがあります。その良い例がほとんどの人が自分が空気を吸っていることすら忘れていることです。
木の根っこの部分が見えないのもこれと同じことのように思えます。すなわち根っこは見えないけれど、大地の中で様々な水分や栄養をいただきながら地上の幹の成長を支えています。この目に見えない水分や栄養である「お蔭様」をまずしっかり認識すると、‘ある思い’がじわじわと心の中に湧き出てきます。それは、「感謝の心」です。
人に喜ばれることがなぜ自分の生きる力のエネルギーになるのか。まさにこの「感謝の心」を表現しているからではないでしょうか。「お蔭様」に対して「感謝の心」で報いる。これが私たちが一番自然に生きる生き方、そして一番楽しく生きられる生き方ではないでしょうか。
では「人に喜ばれる生き方」をするためにはどんな力が必要なのでしょうか?
私のこれまでのつたない経験から言えば3つの事が挙げられるのではないかと思います。
一つ。何事にも最善を尽くそうとする力(明るさ、前向きの姿勢)。二つ。素直に人の話を聞く力(素直さ)。そして最後に、人と共感できる力(優しさ)ではないかと。
皆さんの周りではどうですか。やってもみないうちから直ぐに‘出来ない’を連発する人はいませんか。人に何かを頼む時は、まずその状況を受け入れて前に進もうとする人に頼みやすいものですよね。また話をする時も相手の話を良く聞くことなく、自分の意見を言ってしまう人には話しにくいものです。更に人の話を聞いて「あっそう」という何の感情もこもっていない返事しか出来ない人にはなかなか人は近づきがたいものです。ましてやそんな人に頼みごとをするなんて、とても引き受けてくれそうもないと感じてしまいます。
これは企業を例にとっても同じことではないでしょうか。セールスにしてもなんにしても自分ひとりだけの力で業績をあげている人がいたとしても、もしその人が周りの人とうまく関わることができない人であったなら、その成果は誰からも心からの賞賛を受けることなく、単なる一時的な経済的成果だけで終わってしまうことでしょう。ところが少々業績が良くなくても周りの皆と明るく付き合い、優しさ誠実さゆえに皆から信頼され、いつも前向きに物事に取り組むような人がいたら、その人がいるだけで会社が明るくなり、周囲の人々がやる気を出し、長い目で見て会社の業績アップにつながることでしょう。
つまり私たちにとって一番大切なことは、何かを成し遂げる力(地位、財産、名誉などの目に見える成果を上げる力など)がどれだけあるかより、どんな生き方をしているか(明るさ、積極性、素直さ、優しさなどを備え、活き活き生きているか)を基本にすえることではないでしょうか?
先日あるスポーツ選手がインタビューに答えて「試合に勝ったか、負けたかより、どんな勝ち方をしたか、どんな負け方をしたかが、問題だ」と話していました。共通する考え方だと思いました。
このことは勉強の仕方にもそのまま影響してきます。以下次号。       (代表 林 政夫)