(2011年1月17日発行「良い受験」)

「良い受験」 代表 林 政夫

受験が目の前に迫ってきました。いつもこの頃になると最後の最後まで良い受験をしてほしいと思います。「良い受験」、そう「良い受験」です。受験に良いも悪いもないではないか。頑張って受かればそれでいいではないか、とおっしゃる方もおいでになるかもしれません。本当にそうでしょうか。受験は何のためにやるのでしょうか。何度もこのことを確認しなければなりません。少なくとも青藍学院では人間的成長なくして受験は語れないと思っています。受験を通じてどれだけ成長できるか。この観点なくして受験を語ることはできないと思っています。

先日小3のご父母が入塾に当たって相談においでになりました。今の成績はあまり良くないのでこのままやっていけるかどうか心配です。入塾するにあたってどんなことに気をつけたらいいのでしょうか、と。私は次のようにお応えしました。「もし、受験を考えるのでしたら最後は自分で考えて、自分で判断して、自分で決断をする力が必要です。もちろん完璧なものである必要はないのですが、その力を育てることが必要です。そして最終的には与えられた状況の中で自分の力をどれだけ発揮できるかです。裏を返せばどんな状況の中でも自分の力を発揮できる姿勢を育てたいのです。そのためには人に言われたことを素直に受け止められるかどうか。言われたことを理解するだけの聞く力、自分を客観的に判断する力を持てるかどうか。自分で決めたことをつまずきながらも実行できるかどうか。あるいは少なくともそれを実行しようとする意欲があるかどうか。それが受験するにあたって養わなければならない力です」と。受験コースはこんな目的を持って出発しています。

あるお母さんはお子さんが受験をすると決めた時から、新聞の記事を切り取ってお子さんに見せて様々な事を考えさせようとしました。きっとそのお母さんはお子さんが受験をしなかったらそこまでやらなかったかもしれません。しかしお子さんに目標ができた時その目標を達成するためにお子さんとの関係が変化するのです。目標を持ちその目標をかなえるために努力する。これは受験のことだけではありません。普通に大人の人生にもそのままあてはまることでもあります。そして目標を達成するために努力する中で成長していくのは大人も子供も同じです。子供の受験を共に支援するご両親の努力も親として人としての成長に関わってくるはずです。

そんな中でついつい陥りやすい問題点が出てきます。それはお子さんを育てよう、その成長を支援しようとしているのに、毎日勉強の課題につき合っていると、お子さんの様々な問題点が目についてくることです。その結果母親の自分がこんなに心配しているのに言うことを聞かないこの子はしょうがない子だ。「この子はこういう子なんだ」と決めつけてしまうことです。(その場合お母さん自身が簡単に物事を決めつけてしまうという問題を抱えていることに気づいていないことが多いものです。)そこからお母さんの受験のストレスが始まります。このストレスから抜け出すにはお母さん自身の物事の見方考え方を変えていかなければなりません。すなわち人間は常に変化成長し、全ての人間はあらゆる可能性を持っているということを考えてほしいのです。問題はどうやってその持っている力を引き出すことができるかということにかかっているのです。それが本来の子育てであり子供の受験の支援だったはずです。そういう意味でも受験生の親も子供に教えられながら学んできている筈です。

いよいよ受験直前です。特に中学受験生のご両親は一番心配な時期です。受験校で迷うこともあったでしょう。合格できるかどうか、お子さんが当日キッとした目つきで前を向いて試験場に向かえるかどうかなど不安は尽きません。しかしまだまだ最後の仕上げが残っています。お子さんが受験生として自分なりに学校を決め、覚悟を決めて試験場に向かい、その結果を自分で受け入れる。3~5日の入試の間に途中ですでに受けた学校の合否も判明します。第一志望校がうまくいかないことがあるかもしれません。それでも途中の結果に左右されず最後まで自分の全力を出し切る。ここにこれまでの受験勉強の集大成があります。そして受験を終えた時にはお母さんが「この子は・・・」と思っていたお子さんよりも一皮むけた、より成長したお子さんを見ることができるはずです。人は様々な可能性を持っている、人はいつも成長できる、人はいつも自分を変えられる、そんなことを受験を通じて感じてほしいと思っています。まさにその仕上げの時期です。ここでは結果ではなく今までやってきたことを認めてやってほしいと思います。ご家族全員で見守ってほしいと思います。私たちも最後まで全力を尽くします。「良い受験」にするために。